二日酔いと貧血と共に

キッチンドランカー東京OL(常に貧血)

24歳の記憶

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私は外資系企業の受付で、日々業務に終われていた。なんとなく始めた派遣社員が派遣会社のゴリ押しで正社員になっていた。勤務地は落ち着いた芝公園から赤坂へ移動になり。ほんとうに忙しかった。鳴り止まない電話。絶えない来客。山盛りの請求書。さてどこから手をつけようか。24の私には、余裕がなかった。外資だからもちろん英語は必須であったが、惰性で大学生活を過ごした私には試練の毎日だった。こんな単語も聞き取れないなんて。自分が情けない。そんなことの繰り返し。今の自分の行動が正しいのかもわからない。契約がわからない。この説明で合っていたのかな。毎日自信がなかった。最初の頃は仕事帰り泣いていた。明日休む理由を考えていた。気がついたら生理は半年きていなかった。それでも明けない夜はないからまた日は昇り、私の1日は始まっていた。

手探りの毎日でも少しずつ慣れてきた頃、毎日私の姿を見つけると話しかけてくる人がいた。当たり障りなくやり過ごしていたけれど、とても粘り強かった。悪く言うとしつこい人。そんな人なのに嫌悪感が無かったのは、ある一日の出来事のせい。それは、私が仕事中残業していて何から手をつければ良いのか分からなくなってしまい、ぼろぼろ涙をこぼしながら受付に座っていた夜のこと。彼の立場はお客様。私を見つけるとすぐに駆け寄ってきて、あの、大丈夫ですか?どこか痛いですか?と、いつもとは違う声色で話しかけてきた。いつもの彼は軽かった。この時は本当に困った顔と声で、あなたは焦っていて。私は、大丈夫です。お構いなく。失礼します。と会話を遮った。でも彼は、NHKのお天気お姉さん、知ってますか?彼女、放送中に泣いたんです。だから、大丈夫です。ほんとに大丈夫ですか、飲み物、いりますか。事情は知らないけど、あなたは悪くないですよ。大丈夫ですよ。と、声をかけてきたの。私はただ泣いて、帰ってください。と、答えるだけだった。





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