二日酔いと貧血と共に

キッチンドランカー東京OL(常に貧血)

ある夏の日

わたしはきっと札幌のあの部屋で、赤ワインを空けている。どす黒く着色された唇を舐め、映画を観ている。部屋は真っ暗で、ラベンダーのキャンドルの灯りだけ。壁に映る自分の影が好きだった。ふわふわの白いカーペットは酔いが回った身体にはちょっと熱くて、硬すぎるフローリングに横たわるんだ。夏だから窓は開けっぱなし。でも大丈夫、ここ4階だし。ベランダもないし道路沿いだもん。でも物音にはビクビクする。1人の時ってちょっとしたことでも怖くならない?そろそろ疲れたからキャンドルの火を消してベッドに横たわるの。天井を見つめぼーっとして、暑いから服は全部脱いで寝るの。誰もいない、わたしだけの部屋だもん。冷たいを追って何度も寝返りを打ち夢の中へ。目覚めるともう14時だし。なんか全部が面倒だし。友達と会うのも怠いし。何もしない1日の罪悪感に押しつぶされそうになりながら、また布団に潜り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある夏の日

わたしはきっと札幌のあの部屋で、赤ワインを空けている。どす黒く着色された唇を舐め、映画を観ている。部屋は真っ暗で、ラベンダーのキャンドルの灯りだけ。壁に映る自分の影が好きだった。ふわふわの白いカーペットは酔いが回った身体にはちょっと熱くて、硬すぎるフローリングに横たわるんだ。夏だから窓は開けっぱなし。でも大丈夫、ここ4階だし。ベランダもないし道路沿いだもん。でも物音にはビクビクする。1人の時ってちょっとしたことでも怖くならない?そろそろ疲れたからキャンドルの火を消してベッドに横たわるの。天井を見つめぼーっとして、暑いから服は全部脱いで寝るの。誰もいない、わたしだけの部屋だもん。冷たいを追って何度も寝返りを打ち夢の中へ。目覚めるともう14時だし。なんか全部が面倒だし。友達と会うのも怠いし。何もしない1日の罪悪感に押しつぶされそうになりながら、また布団に潜り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死場所探してて三千里

死にたいって思った時に己が背負っている責任を放り出せない、なんとも世知辛い世の中でござりんす。あ、死のう。いいや今死んじゃお。がどんどん増えていって、いつでも死ねるのだけれど、わたし大人だからさ、残される子どものことを考えると行動に移せないんだよね。それでもこの気持ちを落ち着かせたくて、正確には煽りたいのかなんなのかわからないけれど闇雲に歩いて歩いて歩いて。こんな日に限って東京は静かで、わたしの足音以外なに聞こえなくて。広い道路にわたし1人。ここは本当に人口1400万人もいる東京?ほんとに東京?だって、だってね、いつもは車だってうるさいし、酔っ払いもうるさいの。騒音を求めて飛び出したここは、静寂しかなく、わたしはぬるい空気を掻き分けながら、ひたすら進む。その先に目的なんてないのだけれど、立ち止まるよりも時がはやく動くような気がしてたまらないの。はやく過ぎて、そうしたらわたしも、もうちょっと深く息が吸えるようになると思うんだ。800メートルほど歩き、前髪がおでこに張り付くくらいには汗をかき、なんだか途端にバカらしくなってふふって声が漏れたのだけれど、同じように目からは涙が二つぶ溢れ、もう帰ろうと振り返りまた進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選ばない、選んでいたかもな未来

選択肢なんて腐る程あった。どうにでもなった。ただ、選ばなかっただけ。こちらを選んでいたらと思い返すいくつかの道に思いを馳せるのも、お酒がまわった時にはいいんしゃない?24才のわたしなら、しつこく差し出された手を取り一人暮らしを始める。もしかしたらなし崩しに白金高輪の家に住んでいたのかもしれない。仕事をしながら視界に入る彼を横目で追い、仕事終わりには一緒に六本木か麻布十番のあのお店で食事して、細い目を更に細くさせていたのかもしれない。真剣に付き合いたがっていた彼に合わせて、結婚も考えたかもしれない。これは現実だけれど、どんなに会わないようにしても、電車の中、関係のない街で会ってしまうから、少しだけ運命も感じたかもしれない。ほんの少しね。わたしの事をオフィシャルにしたかった年上の顔が薄いあなたと、手の平で転がして楽しんで、気晴らししていた当時のわたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数年前の山下公園にいたあの頃のわたし

どんなに近くにいて肌を重ねても違くて、噛めば噛むほど味がしないガム。吐き出せばいいのに、口が寂しいから味がしないのに噛み続ける。そのうち本当に気持ち悪くなってしまって吐き出したの。でも靴底にひっついて、しつこいしつこいガム。見えないところで転がって、他の人の靴にへばりついて欲しいのに、わたしじゃなきゃダメなんだって。捨てても捨ててもしがみついて、警察のお世話になろうかとも思ったけれど、手練手管でゴミ箱へ。蓋がついた出てこれないゴミ箱だよ。さようなら、永遠に

 

 

 

 

 

 

右目涙の日

憧れ夢に見てたような。左目はお休みしているようです。疲れたよね、疲れたよねー。毎日毎日ありがとうございます。疲れたら休むの。当たり前な事なのに後回しにしてしまうの。よくない良くない。わかってるよ、わかっているの。すきだし、眠るの。でも物理的にそれが自由に出来ない今のわたしなの。後悔なんて1ミリだってしていない。満足している。今この瞬間、隣でわたしの全てが詰まっている赤ちゃんが眠っていて、好きなアーティストの曲をイヤホンで聴くの。右目はお休みしていないから、冷たいよ。この一年色々お休みしているの。その分他はフル稼働して24時間新規プロジェクトを任されているの。常にアンテナ張って。すうすう聴こえる。かわいい。そろそろ彼の頬に、キスして眠る時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしの肉の一部

色濃いから、人生って。だからね、考え事をしていると鼻水が出るのよ。これはね、これはかなり、オブラートに包んでいるの。毎日毎日眠る前に大事な赤ちゃんに伝えるの。大好きだよ、愛してる。ママの全部あげるよって。注ぐ愛がこんなにも、こんなにも優しい気持ちになれるなんて。これまでのわたしも、わたしを作り上げた尊いものなのだけれど、君を授かったその時からわたしの人生って始まったのねって、そんなこと本気で思うくらいに君が好きだよ。100パーセント、君が好きだよ大事だよ。その小さな体でわたしにしがみつく君が好きだよ、ママママって泣き喚く君も好きだよ。こんなに幸せな気持ち、世界が敵に回ることなんて無いけれど、そんな比喩だって使いたくなるくらいに、愛しいよ。君はわたしの全てだよ。