二日酔いと貧血と共に

キッチンドランカー東京OL(常に貧血)

馴染む視界

午前一時。皿を数え続けるお岩さんのような右目が熱を持ちじわじわと私を攻撃する。右側だけ別人の風貌になった私の顔。まるで瞼にナメクジが張り付いているようだ。最後にナメクジを見たのはいつだろう。きっと思い出せないくらい昔なの。だってね、記憶を掘り起こすと塩かけてるもの。子供とはなんて無邪気で残酷なのだろう。けれど子供の私がナメクジに塩をかけると縮むなど知るはずもなく、この残酷な行為はいたずらな大人が教えたのだろう。祖父なのか母なのか、はたまた年上の従兄弟なのか。どうでもいいのだけれど。花火の火花を毛虫にむけたり、アリの巣に洗剤をかけたり。頭の片隅に残っていた私の記憶は、ものもらいで不細工になった自分自身の顔を見て呼び起こされた。記憶って面白い。都合よく書き換える事も出来ちゃうんだから。一番古い記憶ってなんだろうと考える。ああ、あれだ。保育園の園庭で遊んでいる時、お友達がうんちをしたいと言うものだから、トイレに行こうと伝えると、我慢できないからここですると物陰に隠れて穴を掘り用を足し、お尻を拭く物がないと言うのだ。友達思いな私は落ち葉をかき集め、彼女に渡したの。お尻は見事に落ち葉だらけ。そんないらん記憶だって残している。うん、やっぱり脳って凄いよ。それにしても、そんなしょうもない記憶ばかり残している私はなんなんだ。

 

 

キッチンドランカー