二日酔いと貧血と共に

キッチンドランカー東京OL(常に貧血)

この指輪はどうやら私の事が嫌いなようだ

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よろしければ少しご覧になりませんか?私とさほど年の変わらない女性店員の唇から飛び出した言葉は、私に向けられたものだった。

三件目の店を出たあと、頬を赤く染め千鳥足の私に声をかけるなんて。おぬしもやりよるのう。いや違う。覗いてみようかな、ちょこっとだけ。そう思ったの。ショーケースを眺めると可愛い指輪があり、可愛い!って声がこぼれ落ちて、はめてみなよって彼が言ったものだから左手薬指にはめてみたんだ。12万円の指輪はお値段以上の輝きで私の視線を奪ったの。可愛いのにしっくりこないその指輪は10号で、私の指には大きかったんだ。ダイヤモンドってこんな値段で買えちゃうんだ。子供の頃は漠然とダイヤモンド!100万円くらい!って思っていたの。大嫌いな苺を姉が細かく刻んで、これ食べたらダイヤモンドあげると言ったあの日、私は食べないことを選んだ。今同じことを言われたら、食べるの、あの日の苺。大人になってから姉に尋ねてみた。ねえ何故ダイヤモンドあげるから苺食べなさいって言ったの?と。苺食べるたら可愛いから、食べれるようにしてあげたかった。と姉は言う。私は少し笑って、残りのビールを飲み干した。